外国人は空室対策から優良顧客へ コロナ後のインバウンド需要に大きな期待

パナソニック ホームズ不動産株式会社東京東営業所 所長 竹谷幸浩様
[聞き手]株式会社WAKLUS 代表取締役 本間信二

賃貸管理事業を主事業とし、賃貸住宅経営・土地活用の支援から、売買仲介事業、医療・介護事業まで幅広く展開するパナソニック ホームズ不動産株式会社。パナソニック ホームズグループの一員として安定した事業環境のもと、時代の変化に合わせた新しい不動産事業の在り方を追求しています。その一つとして取り組む外国人への賃貸仲介の在り方や可能性について、東京東営業所で所長を務める竹谷幸浩氏に伺いました。

コロナ禍で明らかになった「インバウンド需要」の重要性

本間:不確実性の時代ともいわれ、社会情勢の変化が目まぐるしく、不動産業界もまた様々な変化が生じています。特にコロナ禍の影響は大きく、とりわけ賃貸仲介事業へのインパクトは大きいものとなりました。ようやく社会が動きはじめる中で、外国人のインバウンド需要はどのように変化し、その中でどのような気付きがあったのか、お聞かせいただけますか。

竹谷氏(以下敬称略):当営業所は東京・首都圏を中心に事業を展開していますが、賃貸事業についての大きな潮流としてはドーナツ化現象が進んだ印象がありました。リモートワークの普及などで郊外に移動した人もいるようですが、私の肌感覚としては日本人は微減に過ぎず、実は外国人のお客様が少なくなったことで首都圏の賃貸仲介件数が減ったのではないかと感じています。もちろん、以前から外国人のお客様が増えている印象はありましたが、コロナ禍になって改めて想像以上に需要があったことに気付かされました。

そしてもう1つ、これまで賃貸で暮らしていた人が住宅取得へとシフトしたのも大きな変化と言えるかもしれません。これはコロナ禍というより長らくの低金利の影響と思われ、都市部になればなるほど低金利の恩恵を受けやすくなっているのは明らかなこと。都市部に住み続けるならば、いっそ購入したほうがいいと考える人が増えているのは自然なことでしょう。

本間:そうなると、コロナ後で社会活動がもとに戻れば、賃貸市場では外国人の存在が相対的に大きくなるということでしょうか。

竹谷:そういえるかもしれませんね。ようやく当営業所でも(2022年)5月くらいから動きが見え始め、賃貸業務量ももとに戻りつつあります。外国人の入国制限が完全に撤廃されるのはまだ少し先になりそうですが、元通りになれば、基本的には外国人の日本での住居先はほぼ賃貸なので”純増”となるでしょう。一方で日本人の不動産購入や郊外移転が進めば、さらに割合が高まることになると思います。

外国人を優良顧客とするためにホームパスを活用

本間:もともとインバウンド需要の重要性については、少子高齢化の文脈で語られることが多く、「国内の先細りしていく市場を何で埋めるか」はどの業界にとっても大きな課題ですよね。

竹谷:まさにそうですね。不動産業界でも、かつて空き室問題は郊外や地方の課題と思われがちでしたが、都市部でも徐々に問題化しています。その中で外国人のお客様は単に「空き室を埋める」のではなく、「より良い賃料で入っていただく」優良顧客として期待できると思います。円安の影響もあり、今後ますます外国人が「お客様」として無視できない存在になるのは間違いないでしょう。

本間:そうした感覚は、現場ではどのくらい浸透しているのでしょうか。たとえば、不動産オーナー様はどのように認識されていますか。

竹谷:正直言えば、まだ認識されていないオーナー様も多いですね。しかし、当社の場合、パナソニックホームズの子会社ということで、販売・建築した賃貸住宅の管理業務と合わせて、オーナー様との長期計画を基本とした借り上げを行っていることもあり、空き家リスクも負うことになり、賃料もしっかり確保する必要があります。そこで、外国人のお客様も含めて広く探すほうが、いい借り手を見つけられる可能性が高まるので、事前にそうしたお話をオーナー様にさせていただくことが増えました。実際、若いオーナー様ほど投資意欲が高く、スムーズに話が進むことが多いです。

本間:しかしながら、外国人のお客様に慣れていない方など、戸惑われるオーナー様もいらっしゃるのではないですか。

竹谷:そうですね、そうした時には保証サービス、それでも不安という方には、さらにワクラスのホームパスを利用することなどを説明します。基本的には当社の借り上げ物件の場合、あえて借り上げという言い方はしていませんが、「外国人のリーシング」という形でサポートが受けられるのは、オーナー様にとって大きな安心材料になっていますね。保証サービスだと、コールセンターを介すので言語の問題は困ることはないのですが、結局はやりとりを自分たちでしなければならない。でも、ホームパスの場合は間に入るというより、責任をもって対応してもらえる。幸い何か問題が生じたことはなく、もしかするとワクラスさんの方で大変だったかもしれませんが…。

本間:いや、実は私たちにとっては、さほど大したことはないんです。そもそも外国から来て「ちゃんとしなくては」と思っている方がほとんどなので、むしろ日本人よりも”悪意のある人”に出くわす割合は低いですし、私たちもホームパスで丸抱えするからには審査もしっかり行なっています。実はトラブルの原因は「日本の商習慣や仕組みに疎いから」がほとんどの理由で、ちゃんと説明すれば大きな問題にはなりません。たとえば、敷金・礼金などは納得してもらえるはずがないので、料金体系を外国人が納得できる形に変えるとか、そうした工夫を行なっています。つまり、お互いの齟齬を調整して解消すれば、優良顧客になっていただけるというわけです。

竹谷:そのあたりのコツというか、知見があるからこそ、「大したことがない」っていえるのでしょう。そのあたりは、まだ当社側に蓄積されていないので、おまかせできるのはありがたいですね。

貸し手・借り手双方の満足度を高めるサービスとして

本間:実際にホームパスを利用されての率直な感想を聞かせていただけますか。

竹谷:利用するようになって約4年になりますが、入居者はしっかりした方ばかりだし、何かあってもスムーズに対応いただいているので、オーナー様にもご満足いただいています。はじめはどんな入居者が入るのかと思っていましたが、むしろ割合的には日本人のほうがトラブルが多いくらいかもしれません。友達同士で引っ越し作業をして壁に穴を空けたり、ゴミ捨てがいい加減だったり(笑)。でも、ホームパスを利用される外国人の方は専用の引っ越し事業者を利用されるなどちゃんとされているし、そもそもホームパスなら家賃の滞納の恐れもないですし。

本間:ありがとうございます。当社としても、外国人のお客様が住みたいというエリアや物件のニーズに応えるためにも、御社に協力いただけることに大変感謝しています。おかげさまで、御社を通じて賃貸物件を選んだ方から、国内での住替えについても再度依頼されることも幾度となくありました。

竹谷:外国人の利用者様の満足度も高いのですね。確かにその意味では、リーシング的な「借り上げ」という手法に目をつけたのは、「なるほどな」と思いました。私が知る限りでは、高齢者や生活保護を受けている方、そしてアイドルやタレントなど、ちょっと特殊なニーズがある方のためのサービスと言う認識だったんですよね。それで少し警戒したのですが、よく考えてみれば、それぞれのニーズに細やかに対応できるのなら、入居者にとってもオーナー様にとっても安心できる仕組みですよね。たとえば、高齢者なら介護施設との連携がセットになっているとか、アイドルならプライバシーが保たれるよう引越し先がわからないとか、おそらくもっと細分化すれば、賃貸物件のニーズはユーザー群の数だけあるでしょう。不動産業界は、これまでずっと売り手市場でそこにあぐらをかいていたんだと思います。これから、私たちも顧客志向をよりいっそう高める必要があると感じています。

本間:オーナー様、そして外国人利用者様双方の顧客満足度を高めるために、ぜひともホームパスがお役に立てばと思います。そして、入国制限が撤廃されたら、留学生を中心に一気にニーズが高まると思います。そのときにはぜひ、物件の確保をお願いできると幸いです。

竹谷:大いに期待していますよ。そして、できる限りのご協力ができればと思っています。

本間:ありがとうございます!まずは早々に入国制限が撤廃されることを祈っています。本日はお時間をいただきまして、ありがとうございました。

リノベーション物件と外国籍入居者は好相性
ホームパス利用で「日本での暮らし」に安心感を

リズム株式会社 賃貸管理部 カスタマーサポート課 課長 矢田健一様
[聞き手]株式会社WAKLUS 代表取締役 本間信二

リノベーション賃貸の運営など、不動産の新しい価値創出に取り組むリズム株式会社。若年層向け賃貸物件を中心に人気を集め、着実な成長を遂げてきました。コロナ禍により厳しい時期を経験したことを機に、改めて「住」の付加価値に向き合い、一人ひとりが自分らしいライフスタイルを楽しめるような物件提供のあり方を模索しています。その個性的な顧客の一群として、外国籍入居者をどう受け入れていくべきか、同社カスタマーサポート課で課長を務める矢田健一様との対談から探っていきます。

リノベーションによる個性豊かな物件が、若い層や外国籍の方にも人気

本間:御社は「リノベーション投資セミナー」を開催して20〜30代と若いオーナーさんを募り、個性的でおしゃれな物件を多く取り扱っていらっしゃいます。「次世代不動産」と呼ばれるなど、従来のいわば体育会的な不動産会社とは一線を画す、スマートなイメージがあります。

矢田氏(以下敬称略):確かに、勤務時の服装もカジュアルな人が多いですし、お客様ともフラットに接するので、そんな印象はあるかもしれませんね。もともとリズムの創業は「住む人が喜ぶような住まいを提供したい」という思いが原点。ですから、お客様一人ひとりに丁寧に向き合い、コミュニケーションを図りながら、お客様の「理想の住まい」を伺うようにしています。
 しかしながら、賃貸の部屋はノーマルなタイプがほとんどで、若い方々を中心に「自分らしいライフスタイル」を重視する人が多い中で、なかなか「これは」という物件が少ないのが悩みでした。一方、中古マンションはただ年数が経っているというだけで賃料が低い。そこで、中古マンションをリノベーションして魅力ある物件として確保し、「こういう物件に住みたい!」という方に賃貸として提供するという仕組みを考えたわけです。

本間:なるほど、中古物件を付加価値をつけて賃貸に出したいという方と、魅力ある住まいに住みたいという方の両方のニーズに応えようとしているわけですね。リノベーションセミナーという形での集客もユニークですし、齋藤社長が上梓されている著書も大変反響があると伺います。実際、管理戸数はどのくらいになるのですか。

矢田:現在は2,700戸位ですね。そのうち自社で企画したリノベーション物件は750戸位です。全てを自社で企画したリノベーション物件にするのはなかなか難しい為、現在はリノベーションが出来る物件を中心に仕入れの強化をすすめています。

本間:ますます御社らしい、個性ある物件を提供していくところに注力されるということなのでしょう。そうなると、様々な方が自身に合った物件を探しに来られると思います。当社がお手伝いしている外国籍の入居者様からも、御社の物件は人気が高いんですよ。

矢田:当社としても、重要なお客様として、ご紹介をありがたく思っています。たとえば渋谷エリアでは、外国籍の入居者様は3割近くにもなり、ワクラスさんを通じてそうしたお客様にも訴求できることが当社の強みになっています。それだけに、コロナ禍での入国制限は大打撃でした。

外国籍の入居者は、重要な顧客群の1つとして無視できない存在に

本間:インバウンドの需要はかなり落ち込みましたからね。実感としていかがでしたか。

矢田:いや、もう「いなくなって初めて存在の大きさに気づいた」なんて、歌の歌詞みたいですけれど(笑)、本当にそう思いました。人気のある物件に人は集まるので、どうしても空き家物件はでてしまうんですが、それが長期化しているので賃貸の全体数が減っているのだなと。早く出入国の制限が撤廃されることを祈っています。

本間:オーナー様の方はいかがですか。外国籍の入居者様についてご紹介する際に、何か特別な説明が必要だったりすることはありませんか。

矢田:当社のオーナー様は若い方が多いので、比較的に違和感なく受け入れてくださる方がほとんどです。職場の同僚、時には上司が外国人という方も増えていて、生活空間に外国籍の方がいるということに違和感がなくなっているのでしょう。たまに「言葉が通じないのでは」など心配される方もいらっしゃいますが、賃貸保証やワクラスのホームパスなどの説明をすると大概はご納得いただけます。

以前は、油の処理の仕方など、困惑したこともありましたが、今は情報が行き渡っているのか、そうしたこともなくなりました。入居されてから調整が必要になることがありますが、いわばそこは文化や商習慣の違いですし、交渉はワクラスさんにお任せできるので、安心しています。

本間:確かに、たとえば外国籍の方は文化的に「交渉する」のが当然だったりするので、オーナーさんとしてはびっくりされるんですよね。でも、あからさまに開き直ることはなくて、説明すれば納得してもらえる。

矢田:むしろ日本人で無理をいう方のほうが対処に苦慮することが多いです。ただ、コロナ禍ということもあったのか、「今日の飛行機で帰らなければならない」ということがあり、その際はさすがに焦りましたね。でも、ワクラス・ホームパスだと、慌てて入居者と交渉する必要がないので助かりました。

本間:退去手続き中に「もう飛行機が間に合わないから」なんて言われた時はさすがに私も慌てましたよ(笑)。でもまあ、そのあたりの後始末は慣れているので、問題なく対応できました。

矢田:そこはもう本当にありがたいですね。保証会社の場合、何かあった場合、多言語コールセンターにメールで「入居者様に連絡してほしい」とご連絡して、入居者様にお話をきいていただいて、そのご連絡をいただいてお返事して…と、あくまでやってもらえるのは通訳係までなんです。それもメールなので、どうしてもタイムラグができてしまう。でも、ワクラスさんの場合は、一度ご連絡するだけで、全部解決して報告いただけるので、楽をさせてもらっています。

自分らしい個性豊かな「日本での暮らし」を外国籍の方にも提供する

本間:今後、コロナ禍が一段落して出入国の制限が撤廃されれば、外国籍の入居希望者は一気に増えることになるでしょう。

矢田:当社としては、ぜひともウェルカムですね。ワクラスホームパスのようなサービスを利用できれば手間も不要ですし、むしろワクラスさんが連れてきてくださる方は、しっかりした良いお客様なので、大いに期待しています。

本間:ありがとうございます。当社としても、御社がご用意くださるお部屋は、外国籍の方にも好評なので、ご紹介しがいがあります。

おそらく、これまでの賃貸物件はプレーンな部屋ばかりで、できるだけ多くの方にリーチしようという「網」のような発想だったと思います。でも、御社の場合、それぞれ住む人が自分らしさで部屋を選べるような仕組みをつくっていらっしゃる。その点において、お国柄や個性を重視する外国籍の入居者にも大変フィットしていると感じています。

矢田:確かにそうですね。個人的にはもっとターゲットを絞って訴求する、マーケティングがもっと賃貸業界にあってもいいのではないかと感じています。たとえば、防音設備は音大生には魅力とか、大きな本棚が読書家には魅力とか。普通の人よりも少し多く払ってでもそこに住みたい人というのがいるはずなんです。

本間:ちなみに外国籍の方に人気の部屋の傾向などはありますか。

矢田:やっぱり学校の多い新宿・池袋エリア、広めでキッチンが充実していることでしょうか。日本に来たのだから畳を選ぶのかと思いきや、やはり洋室を選ばれますね。逆にこだわりが少ないのがお風呂で、三点ユニットやシャワーさえあれば十分という方が多いです。

本間:水回りは改装費がかかるので、そこはオーナーさんとしても外国籍の方向けを意識すると、リノベーション費用を抑えつつ、面白い部屋ができそうですね。あと、日本人は新築にこだわる人が多いですけれど、外国籍の方は外側が古くてもあまり気にしない人が多いですね。そのあたりは、御社のリノベーション物件とも相性がいいかもしれません。

矢田:確かにそうかもしれませんね。「予算内で23区内に住めた」「日本の賃貸物件っぽくなくてよかった」というコメントを清掃会社を通じていただいたこともあります。気に入ってくださったためか、退去時の掃除もとてもきれいにしてくださっていました。

本間:そこは実はコツがあるんですよ。退出時にスマホで写真を撮って送ってもらうんです。その際に、「きれいにすると敷金が多めに返ってくる」とアドバイスすると、しっかりきれいにしてくださるんですよ。日本人にそれをすると煙たがられることが多いのですが、外国籍の方は割と素直に聞いてくれますね。また、壊れたところなどを指摘して、「このくらいかかるかも」と予想をお伝えしておくと、すんなり受け入れてくださることが多いです。しかも、同じ国のスタッフより、日本人スタッフが伝えたほうがスムーズにまとまりやすいんですよ。

田:なんと、いろいろと工夫というか、知見がおありなんですね。そういう積み重ねでスムーズに対応していただけているのだと思います。今後も頼りにしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

本間:こちらこそ、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。本日はお時間をいただきまして、ありがとうございました。

オーナー様の信頼を獲得できる外国人賃貸は、
小規模な不動産会社が生き残るための有効な武器に

株式会社アーバンアセット 代表 山本 真吾様
[聞き手]株式会社WAKLUS 代表取締役 本間信二

小規模ながら、賃貸管理から売買仲介まで、あえて広い範囲をターゲットとすることで成長を続ける株式会社アーバンアセット。オーナー様のリストを持たずに起業したにも関わらず、多くのオーナー様の信頼を勝ち取り、急成長を遂げています。なぜ、ここまで業績を伸ばしてこれたのか、その理由の1つである「外国人賃貸」とその具体的な活用について伺いました。

独立起業後、苦戦続きの中で見つけた外国人賃貸という切り口

本間:不動産業界で起業される方の多くは、組織でのサラリーマン経験の中で仕組みを学び、その際に得たオーナー様とのコネクションを活用されています。しかし、山本さんの場合は、ほぼ未経験でオーナー様の連絡先すら知らない状態から起業されたそうですね。

山本様(以下敬称略):はい、もともと不動産業界に興味関心はあったのですが、友人に誘われたり、引き抜きにあったりして、●●の営業会社や保証会社などで仕事をしていました。一定社会人として経験を積み、独立を考えた時に、以前から興味のあった不動産で勝負したいと思ったんです。そこで、友人の賃貸仲介会社で3か月ほど勉強し、直ぐに起業しました。

本間:思い切りましたね。特に不動産業界では重要とされるオーナー様との関係がないままで独立されることに不安はなかったのですか。

山本:今より少しばかり若かったので(笑)、企業経営の戦略や戦術に関する知識もなく、とにかくがむしゃらに、情熱だけで走り続けていた感じですね。いま、考えると怖いことしていたなと思います。実際、起業したばかりの時は、もちろん管理物件もありませんし、どうやって日々の売上を確保するかにとても苦労していました。

本間:私も、社会人としての経験の8割は中小企業なので、「情熱だけで走り続けた」っていう表現はとてもわかります。そんな起業後のご苦労の中で、なぜ外国人賃貸という切り口に着目されたのですか。

山本:起業後はとにかくお客様に紹介できる管理物件が欲しくて、それを最優先事項として、仲介事業の売り上げだけでつないでいこうと考えていました。ただ、始めてみると媒介のご契約は取れても、専任のご契約は全然いただけなくて。弊社は、ハウスメーカーのグループ会社や社内に売買事業部があるスキームでもないし、管理物件を獲得することへのハードルがかなり高い。そのことに改めて気づき、愕然としました。

ただ、そんな時に、私がオーストラリアに留学していた時に知り合った友人の息子さんが日本に留学することになって、お部屋探しを相談されたんです。そこで、媒介のご契約をいただいていたオーナー様に話をしたところ、お部屋を貸していただいた上に、専任のご契約もいただけたんです。

本間:そんな棚ぼた的な話があるんですね(笑)。

山本:はい。一見、ただのイレギュラー案件かと思ったら、話は終わらず…。そのオーナー様いわく、他に媒介契約している不動産会社が外国人を斡旋してきたことが無かったそうで、弊社のリーシング力が高いと評価してくれたんです。さらに借主が外国籍ということで、管理対応ができる弊社と専任で契約したいといわれました。その期待に応えるために、ワクラス・ホームパスを導入し、大変スムーズに契約がかないました。このことがきっかけで、いまでも、そのオーナー様とはお付き合いさせていただいていますし、売買仲介までやらせていただくようになりました。

小規模な不動産会社でも、手に入れることのできる”差別化”

本間:そのお話は、双方にとって完璧に外国人賃貸のメリットが得られた案件ですね。その後からはどんどんと管理物件が増えていったんですか?

山本:いや、話はそんなに簡単ではないですね。外国人を客付けできれば、必ずしも専任をいただけるというわけではなく、オーナー様の中には外国人賃貸に評価をいただけるケースもあるというだけです。

しかし、間違いなく言えるのは、外国人賃貸ができるようになれば、他の媒介さんよりもリーシング力が増すということです。これは媒介のつらいところなんですけど、ご契約をいただいて募集活動に費用をかけても、他よりも先に客付けできなければ売上はゼロ。、そういう競争環境ではリーシング力の僅差が売り上げの大きな差になるんですよ。

募集条件の広告料に差をつけるようなこともできますが、単純に売り上げを減らす行為なので、決まったとしてもメリットが少ないですから悪手としかいえません。正直なところ、じゃあ、他の媒介さんとどう差別化するのかという話になると”グット アイディア”なんて見当たらないわけで。

本間:世の中、そんなに甘くないですね。あくまで、私の経験則ですが、管理戸数が数千戸規模の管理会社様だと、外国籍の方に対応するために多言語コールセンター等が準備されていますが、それよりも小規模な管理会社様では「外国人賃貸=コスト増」と考えて、あまり注力されていない印象があります。

山本:おっしゃるとおりです。先ほどお話ししたような経験が外国人賃貸に目を向けるきっかけになりましたが、一般的には「外国人=めんどくさい」という発想がほとんどだと思います。だからこそ、弊社が差別化できたわけなんですけどね。

「賃貸住宅フェア2023」にて講演中の山本氏

ワクラス・ホームパスの外国人管理機能を使い倒す

本間:私も「外国籍専門の賃貸をやっています」というと、「なんで、そんなに儲からないビジネスをやってるんですか?」なんて言われるんですよね。でも、実際は、お陰様でこうやって8期目を迎えられていて、ちゃんとビジネスになっている。「外国人はめんどくさい、コスト増」という考え方がもう古いというか、勘違いなんですよ。もちろん、やり方次第ではあるんですけど。

山本:そう、やり方次第ですよね。普通の不動産会社が外国人の借主様を迎えるために、いろいろな国籍のスタッフを雇っていたら採算は合わないと思いますよ。弊社でも、英語での対応は私ができたとしても、中国語を話せるスタッフはいないし、韓国語は、ベトナム語は、ということになる。ワクラス・ホームパスの良いところは、利用する不動産会社が無料で外国人の管理機能を使えるところですよね。だから、弊社では「何かあったら全てワクラスさんに投げなさい」と指示しています。

本間:我々が借主なので、全てお引き受けするのは当然と思っています。どんどん投げてください(笑)。むしろ山本代表に、そうやってご評価いただけると、本当に「やっていてよかったな」と思います。

これは私の持論というか確信でもあるんですが、外国人賃貸って、その管理コストを日本人よりも低くしないと誰も好んでやらないんですよね。会社のトップが「少子高齢化の時代には、外国人の方々に積極的にご入居いただくことが重要」といっても、現場の方々は、「どうやって対応するんだよ……」と思考停止するというのが大方です。ぜひワクラス・ホームパスという、手間もコストもかからず、外国人賃貸を自社のメニューとして取り込めるサービスがあることを広く知っていただきたいですね。

山本:はじめたもん勝ちというところはありますからね。当社にとってはあまり広がらないほうが、差別化になるのでありがたいんですが(笑)

デジタル化や外国人賃貸の恩恵をオーナー様に還元する

本間:少し視点を変えてお話を伺いますが、アーバンアセットさんは入居者様や仲介会社様とのコミュニケーションを出来る限りオンラインで行なっていらっしゃるとききました。その取り組みについて、全国賃貸新聞に取り上げられただけでなく、賃貸住宅フェアのセミナーでも山本代表が講師となって紹介されたそうですね。

山本:はい。オーナー様、仲介会社さんとのコミュニケーションおよび情報共有にLINEを活用しており、現在、約6,000名の仲介スタッフの方々にLINE公式アカウントの”友だち”として登録いただいています。そこでは新規募集物件のお知らせや条件変更等の情報を、タイムリーにどんどん発信させていただいています。

本間:6,000名とは、すごい数ですね。それだけのネットワークがあると、御社に期待されるオーナー様には「頼もしい」の一言ですね。

山本:これも外国人賃貸と同じように、オーナー様の物件と入居希望者様との出会いの機会を増やすためと考え、こだわりをもってやらせていただいています。

コミュニケーションのデジタル化やネットワークの強化は、オーナー様個人では難しいことなので、そこは媒介・専任ともに弊社が担うべきことだと考えています。一所懸命がんばるのは当然で、具体的にできることを示し、実際に結果を出すまでに至らないと、信頼関係なんて築けないんですよ。

本間:ごく真っ当ながら、なかなか容易ではない覚悟というか、コミットメントですね。それは、全国賃貸新聞にも取り上げられますね。

山本:全国賃貸新聞では、弊社が取り組んでいるデジタル化の中でも、主にアプリケーションを活用した管理コストの軽減について掲載いただきました。LINEにしても、管理アプリケーションにしても、弊社が取り組むことでオーナー様にデジタル化の恩恵を還元できると考えています。

そもそもデジタル化が遅れている不動産会社をご利用のオーナー様は、目には見えない損を山ほどしてるはずなんですよね。同じように、外国人賃貸についても、仕組みを知らない、利用していないオーナー様は、優良な入居者様と出会う機会を過分に損失していることを知っていただきたいと思います。

デジタル化や外国人賃貸の恩恵をオーナー様に還元する

本間:今後のアーバンアセットの展望をお聞かせいただけますでしょうか。

山本:時代や状況が変われば、具体策は変わりますが、オーナー様にメリットのあることであれば、専門家として積極的に導入していきたいと考えています。それは、外国人賃貸やDXと表現される領域もそうですし、期待に応え、結果を出せるものにこだわって取り組んでいきたいですね。

本間:関西への出店計画もあるそうですね。

山本:元々、私が関西出身ということもあり、来年(2023年)の繁忙期後の出店を考えています。それまでには、ワクラスさんにもエリアの拡大をお願いできれば幸いです。

本間:ご期待に応えられるよう、頑張ります。本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

「賃貸住宅フェア2023」にて講演中の山本氏
「賃貸住宅フェア2023」講演会場の様子