外国人は空室対策から優良顧客へ コロナ後のインバウンド需要に大きな期待

パナソニック ホームズ不動産株式会社東京東営業所 所長 竹谷幸浩様
[聞き手]株式会社WAKLUS 代表取締役 本間信二

賃貸管理事業を主事業とし、賃貸住宅経営・土地活用の支援から、売買仲介事業、医療・介護事業まで幅広く展開するパナソニック ホームズ不動産株式会社。パナソニック ホームズグループの一員として安定した事業環境のもと、時代の変化に合わせた新しい不動産事業の在り方を追求しています。その一つとして取り組む外国人への賃貸仲介の在り方や可能性について、東京東営業所で所長を務める竹谷幸浩氏に伺いました。

コロナ禍で明らかになった「インバウンド需要」の重要性

本間:不確実性の時代ともいわれ、社会情勢の変化が目まぐるしく、不動産業界もまた様々な変化が生じています。特にコロナ禍の影響は大きく、とりわけ賃貸仲介事業へのインパクトは大きいものとなりました。ようやく社会が動きはじめる中で、外国人のインバウンド需要はどのように変化し、その中でどのような気付きがあったのか、お聞かせいただけますか。

竹谷氏(以下敬称略):当営業所は東京・首都圏を中心に事業を展開していますが、賃貸事業についての大きな潮流としてはドーナツ化現象が進んだ印象がありました。リモートワークの普及などで郊外に移動した人もいるようですが、私の肌感覚としては日本人は微減に過ぎず、実は外国人のお客様が少なくなったことで首都圏の賃貸仲介件数が減ったのではないかと感じています。もちろん、以前から外国人のお客様が増えている印象はありましたが、コロナ禍になって改めて想像以上に需要があったことに気付かされました。

そしてもう1つ、これまで賃貸で暮らしていた人が住宅取得へとシフトしたのも大きな変化と言えるかもしれません。これはコロナ禍というより長らくの低金利の影響と思われ、都市部になればなるほど低金利の恩恵を受けやすくなっているのは明らかなこと。都市部に住み続けるならば、いっそ購入したほうがいいと考える人が増えているのは自然なことでしょう。

本間:そうなると、コロナ後で社会活動がもとに戻れば、賃貸市場では外国人の存在が相対的に大きくなるということでしょうか。

竹谷:そういえるかもしれませんね。ようやく当営業所でも(2022年)5月くらいから動きが見え始め、賃貸業務量ももとに戻りつつあります。外国人の入国制限が完全に撤廃されるのはまだ少し先になりそうですが、元通りになれば、基本的には外国人の日本での住居先はほぼ賃貸なので”純増”となるでしょう。一方で日本人の不動産購入や郊外移転が進めば、さらに割合が高まることになると思います。

外国人を優良顧客とするためにホームパスを活用

本間:もともとインバウンド需要の重要性については、少子高齢化の文脈で語られることが多く、「国内の先細りしていく市場を何で埋めるか」はどの業界にとっても大きな課題ですよね。

竹谷:まさにそうですね。不動産業界でも、かつて空き室問題は郊外や地方の課題と思われがちでしたが、都市部でも徐々に問題化しています。その中で外国人のお客様は単に「空き室を埋める」のではなく、「より良い賃料で入っていただく」優良顧客として期待できると思います。円安の影響もあり、今後ますます外国人が「お客様」として無視できない存在になるのは間違いないでしょう。

本間:そうした感覚は、現場ではどのくらい浸透しているのでしょうか。たとえば、不動産オーナー様はどのように認識されていますか。

竹谷:正直言えば、まだ認識されていないオーナー様も多いですね。しかし、当社の場合、パナソニックホームズの子会社ということで、販売・建築した賃貸住宅の管理業務と合わせて、オーナー様との長期計画を基本とした借り上げを行っていることもあり、空き家リスクも負うことになり、賃料もしっかり確保する必要があります。そこで、外国人のお客様も含めて広く探すほうが、いい借り手を見つけられる可能性が高まるので、事前にそうしたお話をオーナー様にさせていただくことが増えました。実際、若いオーナー様ほど投資意欲が高く、スムーズに話が進むことが多いです。

本間:しかしながら、外国人のお客様に慣れていない方など、戸惑われるオーナー様もいらっしゃるのではないですか。

竹谷:そうですね、そうした時には保証サービス、それでも不安という方には、さらにワクラスのホームパスを利用することなどを説明します。基本的には当社の借り上げ物件の場合、あえて借り上げという言い方はしていませんが、「外国人のリーシング」という形でサポートが受けられるのは、オーナー様にとって大きな安心材料になっていますね。保証サービスだと、コールセンターを介すので言語の問題は困ることはないのですが、結局はやりとりを自分たちでしなければならない。でも、ホームパスの場合は間に入るというより、責任をもって対応してもらえる。幸い何か問題が生じたことはなく、もしかするとワクラスさんの方で大変だったかもしれませんが…。

本間:いや、実は私たちにとっては、さほど大したことはないんです。そもそも外国から来て「ちゃんとしなくては」と思っている方がほとんどなので、むしろ日本人よりも”悪意のある人”に出くわす割合は低いですし、私たちもホームパスで丸抱えするからには審査もしっかり行なっています。実はトラブルの原因は「日本の商習慣や仕組みに疎いから」がほとんどの理由で、ちゃんと説明すれば大きな問題にはなりません。たとえば、敷金・礼金などは納得してもらえるはずがないので、料金体系を外国人が納得できる形に変えるとか、そうした工夫を行なっています。つまり、お互いの齟齬を調整して解消すれば、優良顧客になっていただけるというわけです。

竹谷:そのあたりのコツというか、知見があるからこそ、「大したことがない」っていえるのでしょう。そのあたりは、まだ当社側に蓄積されていないので、おまかせできるのはありがたいですね。

貸し手・借り手双方の満足度を高めるサービスとして

本間:実際にホームパスを利用されての率直な感想を聞かせていただけますか。

竹谷:利用するようになって約4年になりますが、入居者はしっかりした方ばかりだし、何かあってもスムーズに対応いただいているので、オーナー様にもご満足いただいています。はじめはどんな入居者が入るのかと思っていましたが、むしろ割合的には日本人のほうがトラブルが多いくらいかもしれません。友達同士で引っ越し作業をして壁に穴を空けたり、ゴミ捨てがいい加減だったり(笑)。でも、ホームパスを利用される外国人の方は専用の引っ越し事業者を利用されるなどちゃんとされているし、そもそもホームパスなら家賃の滞納の恐れもないですし。

本間:ありがとうございます。当社としても、外国人のお客様が住みたいというエリアや物件のニーズに応えるためにも、御社に協力いただけることに大変感謝しています。おかげさまで、御社を通じて賃貸物件を選んだ方から、国内での住替えについても再度依頼されることも幾度となくありました。

竹谷:外国人の利用者様の満足度も高いのですね。確かにその意味では、リーシング的な「借り上げ」という手法に目をつけたのは、「なるほどな」と思いました。私が知る限りでは、高齢者や生活保護を受けている方、そしてアイドルやタレントなど、ちょっと特殊なニーズがある方のためのサービスと言う認識だったんですよね。それで少し警戒したのですが、よく考えてみれば、それぞれのニーズに細やかに対応できるのなら、入居者にとってもオーナー様にとっても安心できる仕組みですよね。たとえば、高齢者なら介護施設との連携がセットになっているとか、アイドルならプライバシーが保たれるよう引越し先がわからないとか、おそらくもっと細分化すれば、賃貸物件のニーズはユーザー群の数だけあるでしょう。不動産業界は、これまでずっと売り手市場でそこにあぐらをかいていたんだと思います。これから、私たちも顧客志向をよりいっそう高める必要があると感じています。

本間:オーナー様、そして外国人利用者様双方の顧客満足度を高めるために、ぜひともホームパスがお役に立てばと思います。そして、入国制限が撤廃されたら、留学生を中心に一気にニーズが高まると思います。そのときにはぜひ、物件の確保をお願いできると幸いです。

竹谷:大いに期待していますよ。そして、できる限りのご協力ができればと思っています。

本間:ありがとうございます!まずは早々に入国制限が撤廃されることを祈っています。本日はお時間をいただきまして、ありがとうございました。

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